プレイバック・シアターとは

プレイバック・シアターとは

プレイバック・シアターは、対話と分かち合いのための即興劇です。
そこに特別な脚本はなく、そこに集う私たちによって紡がれる“ストーリー”によってつくられる劇場です。
楽しみながらお互いに知り合い、自分自身の心や身体に目を向け、
誰かの語る言葉に耳を傾け、時に遊び心や想像力をつかって誰かの気持ちや経験を受け取り、表現します。

私たちは誰しも人生の記憶、思い出(ストーリー)をもっています。
しかし日々の生活の中で、それらは心の片隅に埋もれてしまっているかも知れません。

自分自身を振り返り、自分の人生の一場面を劇として取り出してみることは
自分自身を見つめ直し、また思いがけない気持ちに出会うことができるかも知れません。

誕生の背景

プレイバック・シアターは1970年代中盤、アメリカのジョナサン・フォックスによって考案されました。

ジョナサン・フォックスはプレイバック・シアターのルーツとして3つの要素を挙げています。
ひとつは古典伝承物語のもつ智恵を語り継ぐ力、
ふたつ目はネパールで体験したコミュニティのもつ集い、語り合うことの力、
そしてみっつ目は演劇がもつ広く分かりやすく伝える力です。

またプレイバック・シアターを確立していく中で、
個人のストーリー(出来事や経験、思い出)を語るということは、その人の深く繊細な部分に触れることを避けられないため、J.L.モレノのもとサイコドラマを学び、現在ではその精神的治癒力も注目されています。

しかしサイコドラマが治療を目的とした手法であるのに対し、
プレイバック・シアターはあくまでも分かち合うことに主眼をおいた手法であるという点が大きなスタンスの違いといえるでしょう。

プレイバック・シアターの構造

プレイバック・シアターは、創造性溢れる自由な場ですから、ルールや決まり事といったものはなく、その代わりに自由に表現するための、絵画でいうならキャンバスのような枠組み「リチュアル」を設けています。
それは、ステージのつくり、コンダクターのあり方から舞台に立つアクターの居方まで様々です。
「リチュアル」は制限されるものではなく、心地よく安心して語りあい、分かち合うための土台であり、「大切にし、大切にされる場である」というメッセージでもあります。
 
プレイバック・シアターはコンダクターによって進行されますが、
目的やその場の状況にあわせて大きく分けるとワークショップとパフォーマンスの二つのやり方があります。
 
ワークショップでは、参加者全員があるときは語り手となり、あるときは表現者となります。
パフォーマンスとして行なう際はある程度トレーニングを積んだパフォーマーがアクターやミュージシャンとして、参加者の中から語り手を募ります。
どちらの場合も誰かによって語られたストーリーを受け取り、表現することに変わりはありません。
 

活用領域

プレイバック・シアターは、コミュニティのなかで人と人のつながりをはぐくむ場として、趣旨や目的によって様々な形で活用されています。
学校教育では学級崩壊緩和や感情教育として、
また企業研修ではメンタルヘルスやコミュニケーションの活性化を目的として、
医療や福祉領域では、デイケアプログラムや、カウンセリングと併用したグループワークとして
幅広く活用されています。
 
<プレイバック・シアターの療育構図>
 
 
また世界では、紛争地域や歴史的な傷が残る民族同士の相互理解の場として行なわれることもあり、プレイバック・シアターは現在世界50カ国以上の国々に広がっています。
 

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 2016年8月ミャンマー孤児院でのパフォーマンスの様子