プレイバック・シアターらしんばん
メディア掲載 沖縄琉球新報
プレイバック・シアターとは NPO法人らしんばんについて 文献・論文 セミナー・ワークショップ お問い合わせ・お申し込み
プレイバックシアターとは
提携団体のご紹介
メディア掲載情報のご案内
プレイバック・シアターTVメディア取材情報
プレイバックシアター(プレイバック・シアターらしんばん)各種取材・出演お申込み
 

トップNPO法人らしんばんについて>ジャパンタイムスに取り上げられました
トップ企業教育、組織開発への導入>ジャパンタイムスに取り上げられました
演劇を楽しむ高齢者たち。人生の一場面を、プレイバック・シアターで
目の前で演じられた劇を見終わると、後藤清子さん(86)は目頭をおさえました。「よかったわ。見られてよかったわ」と言いながら。
一見そのストーリーは、夏のお盆休みに親戚一同が集まるというシンプルなお話に見えました。

しかし、高齢者施設「ほっとハウスぬくぬく」(東京都品川区)を訪れた役者たちによって演じられたその劇は、
人生の大切な一場面を演じてもらった、後藤さんにとってのかけがえのない出来事でした。

ジャパンタイムス掲載記事
後藤さんはその日居間に集まってプレイバック・シアターに参加した13人の入居者の1人でした。

このプレイバック・シアターは日本にある7つのグループのうちのひとつ、
「プレイバック・シアターらしんばん」の7名のメンバーによって行なわれました。

プレイバック・シアターは
観客が語る実際の出来事を役者が劇で表現するという、即興劇の特殊な手法です。

この手法は、通常の演劇よりも実際的でコミュニティーに根ざした劇を模索していた米国のジョナサン・フォックスによって1975年に創られました。今日ではプレイバック・シアターは世界30ヶ国、約75のカンパニーによって様々な場面で行なわれています。

例えば純粋なエンターテイメントとして、さらに治療やカウンセリングとして活用されています。

プレイバック・シアターが日本に紹介されたのは1987年のことです。技術と活用を紹介するワークショップが行われるプレイバック・シアターの世界大会が今年9月25日から9月28日まで静岡県で開催されます。世界大会は2年ごとに開かれ、今回で8回目を数えます。

ほっとハウスぬくぬくでは、痴呆をもつお年寄りの回想療法の一環としてプレイバック・シアターを行なっています。
「小さかった時、どのようにお盆を過ごされましたか?」らしんばんメンバーの松本恵子さんが後藤さんに尋ねます。

松本さんは東京にオフィスをもつグループセラピストです。
その他、作業療法士から演劇を学ぶ学生まで様々な肩書きを持つ6名の役者がお年寄りの中に混じって話をします。

ほとんどの場合は後藤さんは松本さんの質問に対してただうなずいているだけでした。

役者はその話の中から後藤さんが愛知県の非常に厳しい家庭に育ったこと、さらにお盆のために集まった親戚の人たちがおじいちゃんを暖かく迎えたことを聞きとりました。

松本さんはその後、どの役者が彼女自身と両親、そして祖父を演じるかを後藤さん本人に決めてもらい、そして他の人にも聞こえるように、後藤さんのストーリーをもう一度繰り返します。

松本さんの合図で、7人の役者たちは身体表現とセリフそして音楽を使って、後藤さんのストーリーを演じました。
役者の間に打ち合わせはまったくなく、劇は幸せに満ちた最後のシーンに引き寄せられるように、おじいちゃんを真ん中に親戚がみんなで写真を撮る場面へと導かれていきました。

プレイバック・シアターでの事は、痴呆をもつお年寄りの記憶にはおそらくあまり長くは残らないかもしれません。
しかし実はその方々のためになっているのです。

「お年寄りたちは憶えていないでしょうし、多分ここで観たこともすぐに忘れているでしょう」
この施設を管理運営する土淵陽子さんは言います。

「しかし、幸せな体験を思い出すことによって、痴呆が治らないまでも、その進行を確実に防止します」
そしてほっとハウスぬくぬくのスタッフにとってはこの月に一度のワークショップは新たな発見の場でもあるのです。

ジャパンタイムス掲載記事
「百太郎さんが漁をしていたこと、知っていました?」
介護ヘルパーの斉藤美和さんは、田中百太郎さん(94)の、
子どもの頃父親と漁で魚をとっていた劇を見てスタッフに言いました。

「私たちは入居者のプロフィールカードを持っています。
しかし、それがすべての過去を明らかにしているとは限りません」と斉藤さんは言います。

らしんばんのリーダーであり、プレイバック・シアターを日本に紹介したひとりである羽地朝和氏は、
プレイバック・シアターによって育まれるコミュニティー精神を特に大切にしています。

彼はこのように言っています。
「中世のヨーロッパにおいて、劇は人々がコミュニティの中で様々な価値観を分かち合う場でした。プレイバック・シアターにはそういった劇が本来持っていた根っこのところを受け継いでいるのです」

プレイバック・シアターは現在さまざまな場所で行なわれています。ほっとハウスぬくぬくに加えて、
らしんばんメンバーは定期的に、精神科クリニックやアルコール依存症の人たちの為の病院を訪れています。

さらにプレイバック・シアターは企業における人材育成の一部としても活用されています。

海外でも、アンゴラの難民キャンプの中で行なわれたり、2001年9月11日にテロ攻撃を受けたニューヨークの多文化的な環境の中で、
緊張と憎しみを緩和するためにプレイバック・シアターは使われています。

「プレイバック・シアターは、人々が経験を分かち合う機会を与えてくれます。」と羽地氏は言います。
「恐らくストーリーを語ることで、たとえそれが辛いものであったとしても、聞いてもらって、受け止めてもらうことで心安らかになり、それが治癒的効果に結びつくのです。」

ジャパンタイムス掲載記事
福岡の精神科医 諸江健二氏は2001年から3か月に一度
プレイバック・シアターのセッションを羽地氏と共に続けてきました。

諸江氏は、プレイバック・シアターによって患者の何人かはその苦しみの源を見つけ、
そしてその問題に客観的に向き合うのを助けられたと言います。

そして、他の治療で効果を得られなかった人でも、
プレイバック・シアターによって社会復帰できた人もいます、と付け加えました。

「人格障害を持つほとんどの人はグループになじむのが難しい。
ですから、ひとりの医者と向き合っていくことである種の安心感を得ることができます。

しかしプレイバック・シアターの中で、その場にいるみんなから受け入れられることは、
ひとりの医者と信頼関係を築く以上に大きな意味をもつのです」諸江氏は言いました。

プレイバック・シアターが何故これほどまで広がったのか?羽地氏に尋ねると、彼はこう答えました。
「誰しもが語りたいという欲求をもっています。しかしながら本当に安心して自分を語れる場が、だんだん少なくなってきているのではないか、私はそう思います」


取材 下谷内 奈緒

Copyright 2006 © プレイバック・シアターらしんばん. All rights reserved.
Copyright 2006 © プレイバック・シアターらしんばん. All rights reserved.