「象のささやき、蟻の恫喝」全五回終了しました! & フライング告知

8月に開講した夏の実験ワークショップ 「象のささやき、蟻の恫喝」全五回が無事終了いたしました!

担当したのは岩橋由莉と向坂くじら(筆者)。

2020年1月から、声(朗読)と言葉(詩)を扱うシリーズを作り続けているふたりです。

「象のささやき、蟻の恫喝」はその五作目となる企画でした。

 

▲シリーズ宣伝画像たち

 

シリーズ近作の「言葉の響き(2020/5~6)」「言葉を歩く(2020/8~11)」「言葉のあいだ、声のはじまり内がわ編/外がわ編(2021/3~6)」では、各回最後に発表会を行ってきました。向坂(筆者)が担当するライティングや詩のワークでできた作品を、岩橋の担当する声のワークで朗読作品として仕上げ、オンラインとはいえ実際にお客さんを入れて発表をします。

どういうわけか、シリーズが回を追うごとに講師ふたりはストイックな路線に突き進み、最新の「言葉のあいだ、声のはじまり」では当日直前まで参加者一人一人とやりとりをしながら推敲をし、発表会前のギリギリまでリハーサルを行っていました。

さすがにちょっとくたびれてきたところで夏休みの時期に入り、さらにこのシリーズよりもずっと他愛ないことをしていた「月曜夜の会」も終了したため、「一回声と言葉のシリーズでも気軽に実験的なことをやってみようよ!」ということになり、「象のささやき、蟻の恫喝」が生まれたのです。

 

「実験ワークショップ」と銘打ったので、講師ふたりが前々からやってみたかったおもしろそうなことばかりやるワークショップになりました。

一回目は岩橋の担当。ふだんの朗読ワークショップでは詩や文芸作品、昔話などを朗読のテキストに使いますが、今回はあえて「新聞広告」を声に出して朗読しました。声に出される前提でない、ものを売るための言葉。それを声に出して読む違和感が、むしろ声そのものの持つ色をあぶり出すようでした。

二回目は筆者・向坂が担当しました。「声に出される前提でないテキストを読む」というところを前回から引き継ぎ、「コンクリート・ポエトリー」を声に出して読みました。ひとりでは到底読みきれない空間的な詩を、複数人で同時に読む。そのあとには実際にコンクリート・ポエトリーの創作も行いました。

三回目はもともと岩橋に担当が戻る予定だったのですが、打ち合わせの中で急遽変更。ふたたび向坂が担当し、話し言葉にフォーカスを当てて、ペアになってお互いにインタビューをし、相手の話し言葉を書き取るという活動をしました。書き取ったものを読んだのですが、ただ読むのではなく、接続詞や助詞、間投詞など、話の内容とは関係ない、骨子のような部分だけを声に出して読んでもらいました。

つづく四回目では岩橋が「話し言葉」をテーマとしたワーク。順番を変更したのは、このバトンタッチのためでした。この回では、漢詩を自分の話し言葉に超訳したものを声に出して読みました。同じ漢詩でも、超訳する人によってまったく雰囲気が変わるのがふしぎです。友だちに話しかけられるように聞く漢詩は、胸にじーんと染みてくるものがありました。

そして、最終回。「話し言葉を使って、自分が誰かに話しているというていの作品を書く」ということをしてもらいました。お題は、「実際には起きていないけれども、自分にとっては本当に経験したように思えるあるシーン」。たくさんの鬼気迫る妄想が聞けて、とってもおもしろかったです!

こうして並べてみると、「ふだんはわざわざ文字にしたり、声に出したりしないことを、あえて取り上げてみる」ということをずっとしてきたと言えそうです。

声に出すのがむずかしい言葉を、どうにかこうにか声に出してみる。話すそばから消えてしまう日常の話し言葉を、あえて文字にして押しとどめてみる。この試みを通して、作品というかたちでなくても身近にある言葉や声のなかにすでに詩や表現があること、そしてそれはちょっと意識を変えるだけですくい上げられて見えてくるのだということ、をやってみたかったのだな、という気がします。作品として発表されるハレの表現ではなく、日常生活の中にあるケの表現、というようなものでしょうか。

発表会のない実験ワークショップだったからこそできたことかもしれません。

 

さて、「言葉と声」シリーズのふたりはすぐにフライング告知をしてしまうことで知られています。新しい企画ができると、すっかりワクワクしてしまうからです。

ここでもちょっとだけ次回の企画をお見せしてしまいましょう。夏は気軽な実験ワークショップでしたが、つぎは冬。あたたかい間は眠らせていたストイックな部分が、まためらめらと起こってくるようです。

 

<フライング告知>

冬期集中ゼミ! 自分の詩を書く 自分の声で読む

【日程】

◯向坂くじら「自分の詩を書く」

2021/11/19(金)19:30-21:30

2021/11/26(金)19:30-21:30

2021/12/03(金)19:30-21:30

2021/12/10(金)19:30-22:00 ★最終回30分延長

◯岩橋由莉「自分の声で読む」

2022/01/14(金)19:30-21:30

2022/01/21(金)19:30-21:30

2022/01/28(金)19:30-21:30

2022/02/04(金)19:30-22:00 ★最終回30分延長

◯発表会

2022/02/11(金) 10:00~12:00

2022/02/11(金) 13:00~14:00 ★祝日

 

近日お申し込み開始予定!

年をまたぐストイックな企画。本気でのぞみます! ぜひお付き合いください。