今日のつぶやき

羽地朝和への逆1on1②〜ハラスメント研修〜

2022年03月14日月曜日 くじら

【羽地朝和インタビュー】スタッフが社長に15分1on1をしてみる②「ハラスメント研修」

 

近年、組織開発のなかで部下の成長を促す方法として注目される1 on 1。
この企画では、それを立場を反転させて行うことを試みます。そのようすをインタビュー記事にしたものです。

話し手:
羽地朝和(プレイバック・シアター研究所所長・コンダクター・研修講師)

聞き手:
向坂くじら(プレイバック・シアター研究所スタッフ・詩人)

フルバージョン(note)はこちら↓

https://note.com/playbacktheatre/n/ncc2846caee32

 

詰め込み型の研修ではなく、話し合いをベースに

―今回は、ハラスメント研修について、ですね。わたしも、一回zoomアシスタントで入らせていただいたことがあります。そのときから、ぜひ一度羽地さんに話を聞きたいと思っていたんです。そのときは年配の男性管理職が多くて、わたしは最初、ビデオも切って、マイクもミュートにしていたんですけど、トラブル対応でやむなくちょっとだけ声を出したんですね。そうしたら、それまではなにもなかったのに、女性だとわかった瞬間、参加者の方からタメ口でチャットが届くようになりました。「ここどうなってるの?」「音が聞こえないんだけど」とか。敬語でも、一回わたしが対処方法をご案内したことに関して、「まだ音が聞こえないのですが……」みたいな追撃がくり返し来たりとか。なので、まあ、「ハラスメント研修、大変そうだなあ」という印象が……これはすごく偏見の籠もった言い方かもしれませんが、「ハラスメントをする人たち」に「ハラスメントをするな」と教えるって、大変じゃないですか?

くじらちゃんが若い女性だということで、主に男性の管理職が言い方や対応を変えてきた、ということですね。そういう社会や組織の体質がまだあるんでしょう。大きな問題の一つですね。くじらちゃんが言うことは、僕がハラスメント研修をやる上での大事な本質を突いている。
このところ、僕の中でもわかってきたところがあって。ハラスメント研修自体は、以前から各社やっているんですよ。だいたいが、座学で「ハラスメントに関する法律が変わりました」「裁判になったら大変ですよ」「だからハラスメントはいけませんよ」ということが扱われてきたんだけど、それをやっても本質は変わっていない。何も変わらないわけです。知識を与えられても行動や風土は変わらない。ましてや自分には関係ないと思うことには関心がわかない。ですから、僕はそういった形とは違った研修をやっていて、手応えがあるの。

―えっ、それでなにをやるんですか。知識の代わりに?

ただ「ハラスメントをやめる」ということがゴールではなく、継続して成果が出せる職場をつくりましょう、その為にみんなが生き生きと、言いたいこと話したいことを言い合える風土を作る。そのための研修です、ということを、まず最初にお伝えしています。不安なこと、不快なことがあったら、それを役職は関係なくお互いに言い合える、自分以外でも困っている人がいたら、「どうしたの?」「大丈夫?」って声をかけられる風土を作ることがゴール。それは、ひいてはみんなが働きやすい環境を作ることだし、そうなれば活性化したよい組織になる。それが継続した成果を生み出すには必須だから。
そのために、今日はハラスメントが起きない職場をどうすれば作れるかをみんなで考えましょう、というところからお伝えしています。「みんなで考える」ために大切なのは、これまでに見聞きしたり経験したハラスメントの事例やそのとき思ったこと感じたことを、お互いオープンに話し合える雰囲気を作ることですね。

―その話し合う人たちっていうのは、ハラスメントを受けているかもしれない側、ってことですか? 両方ありえるのかな。

そこがひとつのポイントなのですよ。おそらく今くじらちゃんは、上司から部下へのハラスメントを想定していますね。もちろんそれが多いけど、同じ一般社員同士で年齢の高い人から若い人、または男性から女性へのハラスメントもある。若い社員でも、派遣社員の方や外注先の方へハラスメントをする場合がある。最近は、部下から上司へのハラスメントもあります。
そういう意味では、誰もが知らず知らずのうちにやっているかもしれない。もしくは、誰もがそれを受けているかもしれない、ということを、研修前半でお話するようにしています。

 

みんなが働きやすい環境づくりのために、「ハラスメントをなくそう」という意識を共有する

よく、「じゃあ先生、NGワードを教えてください」と短絡的に言ってくる人がいる。そういう問題じゃないんだよね。もちろんNGワードはありますよ。だけどそれは本当に最低限のところで、同じ言葉でも、関係性とか、信頼関係があるかないか、言い方によって相手がどう受け取るかが変わってくる。結局、相手が嫌だと感じたらハラスメントになるので、そこが問題になってきます。ですからまずは、お互いの関係性をしっかりと作ったり、現状はどういう関係性なのかを気づくのが大事、というようなことを、「心の栄養ストローク」や「やる気のスイッチ」の解説からお伝えしています。

ーそれは正しいと思う一方で、どういうものがハラスメントかどうかはそのときどきによって変わりますよ、っていう言い方をすると、じゃあ結局なにがハラスメントなの? みたいなことにはならないですか?

僕が研修の中で主に扱うのは、パワーハラスメントと、ジェンダーハラスメントと、セクシャルハラスメントの三つです。その中のパワーハラスメントにも、さらに六つの類型がありますよ、っていう説明をする。ここは知識の講義になりますが、あくまでも、あいまいなものをみんなで明確にして議論をしやすくするための知識としてお伝えしています。

ーなんだろう。類型化するっていうのはどっちかっていうと被害者のためのものであるとも思います。まずしんどさがあって、「あ、これは過大な要求に当てはまるな、ハラスメントと言っていいのかもしれない」みたいなふうに、自分がされたことを被害であると認識していくっていうときは、類型がすごく役に立ちますよね。でも、加害している方には、「いや、これは過大な要求にはあたんないでしょ、だって関係性次第って言ってたし」みたいにとられてしまいそうにも思えます。

もちろん、どれも「本人が望まないことはしない」っていうところが第一なんだよ。くじらちゃんが言うように、類型化することは、「今思うとあれはパワーハラスメントに入るんだ」と意識化する、そのためのひとつの枠組みだね。

ー加害している方も、「あ、これは過大な要求になっちゃってるな」って気付けるのがいちばんいいんだろうな、と思いますけどね。

お互いに認識していれば、「過大な要求になってないかなあ」って話し合う材料になるよね。

ーあ〜。確かに、ハラスメントしたくないしされたくないよね、っていうのがお互いの中で共有できているっていうのが、一番理想な感じがします。

ハラスメントかハラスメントじゃないかってみんな迷う。そのときに、僕の持論なんだけど、こういう基準で考えてみたらどうですか、っていうことはまず投げかけます。同じようなその行為を上司に対しても行うかどうか、とかね。
それからハラスメントってね、当事者同士はハラスメントじゃないって思ってても、周りが見てハラスメントとして訴えられることもあるの。たとえば上司が部下を大きな声で叱りつけているのを、本人同士は関係性の上でハラスメントじゃないと思っていても、他の人はその声を聞くたびにビクッとして怖く感じる。そうすると、それはやめましょうっていうことになるんですよ。

ーそこで、「お互いはいいんだからいいじゃないか」とならないのは、ハラスメントをなくすそもそもの目的が「被害者にしんどい思いをさせない」だけではないから、ということなんですね。それ以上に、最初におっしゃっていた、「みんなが働きやすい組織を作る」、そしてその方が企業の発展に寄与する、という考え方がベースにある。

そのとおりです。みんなが安心して働ける職場を作るっていうのがすごく大事。

 

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https://note.com/playbacktheatre/n/ncc2846caee32